【web3事業者向け】2022No1 モバイルゲームThetanArena徹底解説【ブロックチェーンゲーム個別タイトル解説】

本記事ではBest Mobile Game Award(2022)を獲得したモバイルゲームThetanArenaの細部に迫ります。
ThetanArenaのゲーム設計、トークンエコノミクス、そして価格下落の理由を掘り下げます。

私自身がThetanArenaをプレイして、その魅力を十分に理解しています。実際、その楽しさは、私が国内でTOP3に入るほどにまでやり込んでしまったほどです。その魅力をこれから深堀していきます。

※本記事は私が行っているBCG勉強会での発表内容を一部抜粋する形で作成しています。

ThetanArenaのゲームの基本情報

ThetanArenaの特徴は、何よりもそのゲームの魅力にあります。これは4対4のMOBA(Multiplayer Online Battle Arena)形式のゲームで、すでに人気のあった「Hero Strike」というゲームにブロックチェーン要素を追加したものです。ブロックチェーンの利点を活かしつつ、ユーザーが楽しむことができるゲームデザインになっています。

ThetanArenaは、2022年に数々の著名なタイトルを押さえて、Gam3でのBest Mobile Game Awardを獲得しました。他の候補にはSplinterlands、Guild of Guardians、Skyweaver、Best Royaleなどがありました。 スマホアプリに加えてPCクライアント版も提供されています。

その実績は数値的にも強力です。プレイヤー登録数は2500万人を超え、ピーク時の同時接続ユーザー数(CCU)は15万人を超え、Google PlayやApp Storeでも1位を獲得しています。

ThetanArenaは、ブロックチェーン上で最高のeスポーツゲームになることを目指しています。魅力的なゲームを提供し、コミュニティ主導のゲームデザインを追求し、持続可能なエコシステムを築くという目標を掲げています。さらに、暗号資産保有者、ゲーマー、配信者の3つのキー層を結ぶプラットフォームを構築しようとしています。競技性の高いゲームがまだまだ少ないブロックチェーンゲーム業界において、彼らのビジョンは挑戦的なものです。しかしながら、なぜeスポーツ化にブロックチェーンを必要とするのかという観点から見ると、その必要性はやや弱く感じられます。

ThetanArenaのゲーム構成は、外部ウォレットを使用するNFT参照型です。NFT参照型とは、ユーザーのウォレットを参照してNFTをゲーム内に反映させる形を指します。推奨される外部ウォレットはCoinbaseで、他にもMetamask、Sequenceといった主要なウォレットに対応しています。WalletConnectにも対応済みです。ユーザーはメールアドレスと認証コードを使用してアプリにログインすることができます。NFTやFTを含むトークンの操作はアプリ内では行うことができず、それらの操作はマーケットプレイスを通じて行われます。

以前は新規登録せずにゲームを体験できるゲストモードがありました。今は止まっているようです。

ThetanArenaのゲームサイクルは、収集、PvP(プレーヤー対プレーヤー)、報酬獲得の3段階に分かれています。トークンの報酬を得るためには、NFTのキャラクターが必要です。しかし、NFTのキャラクターを所有していない場合でも、ゲーム自体は遊べますし、キャラクターの性能についてはNFTと非NFT間で差異はありません。

ThetanArenaのNFTの設計

ThetanArenaにおけるNFTの規格はBEP721です。NFTの特徴として、トークンを稼ぐ(マイニング)回数制限が設けられています。回数制限を超えたNFTはトークンを得ることができなくなります。また、NFTの発行枚数は基本的に無制限となっており、現在の発行枚数は346,942体となっています。マイニング回数制限の存在により、NFTの所有感は一部薄れ、消費アイテムのような印象を持つ場合があることが少し残念な点でした。


NFTはガチャによって取得可能です。ガチャは、無制限に発行されるトークンTHCと、数量が限られたガバナンストークンTHGで購入できます。ガチャの価格はトークンに基づいて設定されており、その結果、トークンの価格がNFTの価格に直接影響を与える設計となっています。そのため、トークンの価格が一時的に急上昇した時期には、レジェンダリーガチャの一回あたりの価格が約100万円にまで跳ね上がりました。しかし、2023年5月現在では、その価格は約1200円にまで下がっています。初期参入者は損をした人が多いでしょう。実際に、私自身も大きな損失を経験しました。


トークン価格の下落と並行して、NFT価格も大きく下落しました。その原因は主に3つに絞られます。まず一つ目は、発行枚数に制限がないことから供給過多状態が生じてしまったことです。二つ目は、マイニングが完了した使用済みNFTが再利用できないため、二次市場での購入需要が見込めない点です。三つ目は、NFTのレアリティとキャラクターの強さが比例せず、無料で提供される初期キャラクターでもバトルで優勝できるというゲームバランスの設計です。ソロプレイでは、レジェンド級のキャラクターを使うと逆に敗北し、トークンを得ることができないことが買い手を減らしてしまいます。しかし、これらの設計は、競技性の高さを重視するeスポーツの視点からは適切とも言えます。多くのゲームが先行者優位性を強く保持する中、ThetanArenaは先行者優位性の低さが特徴と言えます。

リリースからおよそ半年後、使用済みNFTを再利用するフュージョンという機能が追加されました。このフュージョンの導入によって、THCの価格は2倍に跳ね上がり、NFTの取引量も4倍に増えました。ただし、この機能は不定期に開催されるもので、大体の頻度としては3ヶ月に1回ほどです。フュージョンを定期的ではなく不定期に設定した理由としては、ガチャという一次販売の売り上げを減らさないためだと考えられます。

このような、NFTを合成して新しいNFTを生成するブリード方式は、運営側が常設の一次販売を設けていないゲームでは頻繁に採用されます。それらのゲームでは、二次市場での取引手数料が主要な収入源となるからです。

トークン価格の下落には市況も大きく影響しています。ThetanArenaは、Axie Infinityが大ブームを起こし、様々なNFTがバブル状態にあった時期、つまり2022年11月にリリースされました。しかし、その後市場は冬の時代を迎えました。

ThetanArenaのトークンの設計

ThetanArenaのFTは、無制限に発行されるTHCと数量限定のTHGの2種類が存在します。それぞれのトークンは明確に異なる用途で使用されています。

THCの価格の維持の仕組みはトークンのバーンです。


しかし、バーンだけでは価格の維持は厳しい状況で、下落が続いています。THCの主な目的は換金であり、価格が下落する恐れがあるため、保有者からすぐに売却されてしまいます。ゲーム内で再投資可能なコンテンツも存在しないため、ソフトペグの仕組みがあれば良かったかもしれません。それでも、ソフトペグのトークン設計自体が困難なため、一概に正解を述べることは難しいです。


ガバナンストークンであるTHGは、配布期間が3年と他のBCGと比較して短い上、供給量が1年で10倍に増加する設計になっています。投資家が保有しにくいと言える設計となっています。

THGの主な用途はNFTキャラクターのレベルアップです。しかし、ユーザーによる試算結果では、レベルアップするほど収益が減少する可能性が高いことが示されています。そのため、レベルアップを行うユーザーは少ないと予想されます。


ThetanArenaはその人気から、Botやチートといった不正行為が発生しました。リリース直後からプレイヤーによる違反報告機能が設けられましたが、報告を行ったプレイヤーに対するフィードバックがない点は改善の余地があったと言えます。この点では、既存のMOBAの人気ゲーム「モバイルレジェンド」などのように、ユーザーが納得できる報告システムがあれば、プレイヤーの離脱を防ぐことができたかもしれません。

※モバイルレジェンドの違反報告の仕組み:通報したユーザーに1時間後に通報結果がフィードバックされる。チーム内に違反行為(例:放置)が確認された場合、レートが保護される保護ポイントを得られる。

新作ゲームThetanrivalsのリリース

ThetanArenaは新作ゲームThetanRivalsをリリースしました。現在、このゲームは一部の国でのみ限定公開されており、日本ではまだプレイすることができません。ThetanArenaが抱える課題を、新作ゲームがどのように解決していくのか、その展開に期待します。

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本サイト管理人が執筆。